サークルの情報等々です。
2011.07.27 Wednesday
設定を上げていないキャラですが、準急有明とにちりんのお話。ウチの準急と特急は違う有明です。そして多分設定がかなり特殊です。
時期的に国鉄時代の話なのでカテゴリは国鉄にしときますね。
そしてこれは懺悔なのですが……これを書いてる時はまだまだ勉強不足な時期でした。すみません。
話は変わりますが、こないだ設置したweb拍手の方にssを置くようにしました。今回は鉄道擬人化一次の、つかこれの続きの話を置いてます。今後は何置くかは……未定です。
時期的に国鉄時代の話なのでカテゴリは国鉄にしときますね。
そしてこれは懺悔なのですが……これを書いてる時はまだまだ勉強不足な時期でした。すみません。
話は変わりますが、こないだ設置したweb拍手の方にssを置くようにしました。今回は鉄道擬人化一次の、つかこれの続きの話を置いてます。今後は何置くかは……未定です。
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準急有明という列車がいたことを知っている列車は少ない。けれど、彼がちゃんとここにいたということを俺はきっと忘れられないのだろう。
今日からお前が、
「有明、勝負だ!」
そう言って、勢い良くドアを開けたにちりんに、有明は困った顔を見せた。
「にちりん、もうちょっと静かに入ってくることって出来ないかな」
やっとこの子が寝たんだよ。そう言いながら有明は自分の傍らで眠っている子供の髪を撫でた。
顔立ちは、有明によく似ている。
「なんだよ、今日も熱出したのか?」
「うん。まだ不安定みたいだ」
この子供に起こっている現象は彼らの常識から逸脱しているものだ。
運行を開始したにもかかわらず、未だ幼いままの特急列車。
その子供を有明が面倒を見ている。
「はあー。そいつ、ホントは俺よりいっこ上なんだろ? 信じられねー」
「そうだね。同感だ」
どうしてこうなったかは判らない。けれど日に日に成長していくこの子供と一緒にいることがいつしか有明の喜びになっていた。
「でも、こんな生活もあと少しだ」
有明が言った。
「今度のダイヤ改正、おそらく、そこで終わる」
「そうなったら、アンタどうする気だ」
にちりんはその言葉の意味を正確に捉えていた。今有明は成長出来ていないこの子供の変わりにある路線を走っている。それを全て、この子供に返すのだ。
「アンタは何処を走る?」
にちりんは有明の眼を捕らえて離さなかった。
有明は笑う。
「さあ。何処かな」
自分の末路くらい解っている。そう言っているかのようだった。
「何だよ、それ」
にちりんは苦虫を噛んだように顔を歪めた。
「それで、良いのかよ」
それってつまり
「死ぬってことだろ」
有明は、答えなかった。
「アンタ、本当にちゃんと考えてるのかよ……!」
にちりんは有明の胸蔵を掴んで怒声を放った。
手が震えている。絞り出すようににちりんは言った。
「自分の路線(場所)を奪われて! もう用ナシだなんて言われて! アンタ、アンタはそれで……」
「にちりん」
名を呼ばれて、にちりんは有明の眼を見た。その眼は真っ直ぐに、にちりんを射抜いている。
「私は何も奪われていないよ」
「違う! 『有明』はアンタだ!」
「私は、『準急有明』だ」
冷静に有明は言う。
「『特急有明』はこの子なんだよ。にちりん。本当ならこうして走っているのは私なんかじゃない。この子なんだ。私は、この子からそれを預かっているだけなんだよ、にちりん」
この子がそれを出来るようになったのならば
「それをこの子に返すべきだ。そうだろう?」
にちりんは胸元から手を放した。
「すまない。君はこんな私のことを心配してくれているんだな」
にちりんの目元から雫が零れた。
「ありがとう。にちりん」
その言葉を聞いてにちりんは立ち上がる。そして有明に背を向けて、無言でその場を去った。
□■□
それから暫くして、ダイヤが変わり、彼は姿を消した。彼がいるはずの場所にはあの日、まだ幼い姿だったあの特急が、彼と同じ姿でそこに立っていた。
「……有明」
有明は遺言めいた言葉を遺さなかった。自分にはただ「ありがとう」と、それだけだった。
「俺はテメェなんか認めねぇよ」
俺の有明はあの人だけだ。
にちりんは背を向ける。彼を『有明』と認めるには、まだちょっと時間が足りないから。
「俺は忘れねぇぞ」
そう言って見上げた空は、雨も降っていないのに滲んで見えた。
準急有明という列車がいたことを知っている列車は少ない。けれど、彼がちゃんとここにいたということを俺はきっと忘れられないのだろう。
今日からお前が、
「有明、勝負だ!」
そう言って、勢い良くドアを開けたにちりんに、有明は困った顔を見せた。
「にちりん、もうちょっと静かに入ってくることって出来ないかな」
やっとこの子が寝たんだよ。そう言いながら有明は自分の傍らで眠っている子供の髪を撫でた。
顔立ちは、有明によく似ている。
「なんだよ、今日も熱出したのか?」
「うん。まだ不安定みたいだ」
この子供に起こっている現象は彼らの常識から逸脱しているものだ。
運行を開始したにもかかわらず、未だ幼いままの特急列車。
その子供を有明が面倒を見ている。
「はあー。そいつ、ホントは俺よりいっこ上なんだろ? 信じられねー」
「そうだね。同感だ」
どうしてこうなったかは判らない。けれど日に日に成長していくこの子供と一緒にいることがいつしか有明の喜びになっていた。
「でも、こんな生活もあと少しだ」
有明が言った。
「今度のダイヤ改正、おそらく、そこで終わる」
「そうなったら、アンタどうする気だ」
にちりんはその言葉の意味を正確に捉えていた。今有明は成長出来ていないこの子供の変わりにある路線を走っている。それを全て、この子供に返すのだ。
「アンタは何処を走る?」
にちりんは有明の眼を捕らえて離さなかった。
有明は笑う。
「さあ。何処かな」
自分の末路くらい解っている。そう言っているかのようだった。
「何だよ、それ」
にちりんは苦虫を噛んだように顔を歪めた。
「それで、良いのかよ」
それってつまり
「死ぬってことだろ」
有明は、答えなかった。
「アンタ、本当にちゃんと考えてるのかよ……!」
にちりんは有明の胸蔵を掴んで怒声を放った。
手が震えている。絞り出すようににちりんは言った。
「自分の路線(場所)を奪われて! もう用ナシだなんて言われて! アンタ、アンタはそれで……」
「にちりん」
名を呼ばれて、にちりんは有明の眼を見た。その眼は真っ直ぐに、にちりんを射抜いている。
「私は何も奪われていないよ」
「違う! 『有明』はアンタだ!」
「私は、『準急有明』だ」
冷静に有明は言う。
「『特急有明』はこの子なんだよ。にちりん。本当ならこうして走っているのは私なんかじゃない。この子なんだ。私は、この子からそれを預かっているだけなんだよ、にちりん」
この子がそれを出来るようになったのならば
「それをこの子に返すべきだ。そうだろう?」
にちりんは胸元から手を放した。
「すまない。君はこんな私のことを心配してくれているんだな」
にちりんの目元から雫が零れた。
「ありがとう。にちりん」
その言葉を聞いてにちりんは立ち上がる。そして有明に背を向けて、無言でその場を去った。
□■□
それから暫くして、ダイヤが変わり、彼は姿を消した。彼がいるはずの場所にはあの日、まだ幼い姿だったあの特急が、彼と同じ姿でそこに立っていた。
「……有明」
有明は遺言めいた言葉を遺さなかった。自分にはただ「ありがとう」と、それだけだった。
「俺はテメェなんか認めねぇよ」
俺の有明はあの人だけだ。
にちりんは背を向ける。彼を『有明』と認めるには、まだちょっと時間が足りないから。
「俺は忘れねぇぞ」
そう言って見上げた空は、雨も降っていないのに滲んで見えた。
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