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2011.07.22 Friday
 まだ、設定も上げてないのに書きました。だってつばめガールに滾ってしまって……!(笑)

 このジャンルでは初めて上げるヤツなのでちょっち不安です。でも後悔はしてません!!

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「ジジイーー!!」
怒号が響く。その声を穏やかじゃない心境で鷗は聞いていた。
 あの様子から察するに、兄は間違いなく昨夜のことを覚えていない。
 兄が酒に弱いのは知っている。酒の類いが全くダメで酔えば「暴走機関車」と渾名される兄だ。酒癖が悪いだとかいう訳ではない。だが酔って酷い目に遭うのは毎度兄自身である。
 それを知っているのに、富士にしろはとにしろ燕に酒を飲ませたがるのだ。厄介この上ない。
「なんで富士さん達はあーかなぁ」
昨夜、「ちょっと一杯引っ掻けよう」と富士が燕を酒に誘った。燕が誘いに乗り、その席に鷗と櫻、それからはとが同席した。早い話いつもの面子で飲んだのだ。
 ザルの富士が「ちょっと一杯」が本当にちょっとで済むはずがない。鷗は自分もまた酒に弱いことを失念していた。兄が飲まされることが不安で同席したはずなのに、鷗は自分が先に潰れてしまったのである。
 そして、不安は的中した。
 兄は見事に酒に呑まれて現在している服を着させられている訳である。しかもご丁寧なことに燕の服は持ち去られており、着替えることすら出来ない。
「でも、そんな、ぷっ」
鷗は兄の姿を思い出して少し笑ってしまった。
「いや、ほんとあれはないよね。つばめガールの制服って」
燕がさせられている服、ごく一部の女性の憧れつばめガールの制服である。普段自分の同僚が着ているそれをまさか自分が着ることになるとは燕は思いもしなかっただろう。
「兄さんが……くっ、つばめガール……」
本格的に笑いそうになって鷗は背後の殺気に気づくことに遅れてしまった。
「ほぉ、貴様もそんなに俺の失態が可笑しいか」
地を這うような低い怒声。恐る恐る振り返れば、そこには兄の姿があった。
「に、兄さん!」
「俺の失態は失態として認めよう。だが、貴様にはそれを止めることが出来たのではないか? なぁ、鷗」
怒った兄は怖い。本当に怖い。一万円いや十万円賭けても良い。
「返事はどうした」
ああ、いったい誰が言い出したんだったか。「超特急燕は女にモテる」と。今なら、いや今じゃなくても弟として断言出来る。兄を好きだとこれを見ても言える女はおそらくいない。仕事中の兄を見てカッコイイだの言ってる女は兄の本質が見えていない、と。
 それほどに、今この状況の燕は恐ろしいのだ。
「だが、ジジイの居場所を吐けば、まぁ赦してやらんこともないぞ? ん?」
兄の笑顔が怖い。
「さ、さぁ。僕は富士さんが何処にいるかなんて知らないなぁ」
鷗は本当のことを言った。富士が今何処にいるか、彼は知らない。
「そうか。そういえばさっきはとにも訊いたんだが、知らないと言っていてなぁ」
ふと気づく。兄の服装は今つばめガールのあの制服ではない。いつもの詰襟ではないが、しっかりと男ものの服を着ている。何処かで見た服なのだが何処で見たかが思い出せない。
 その答えはあっさり、そして簡単に降ってきた。
「あいつもしっかりはとガールにしてやったぞ。いや、つばめガールの制服だからいっそ似非つばめガールと呼んだ方が良いかもしれんなァ」
(はとさんーー!)
もうやられた後だった。
「さあ、貴様はどうする? 鷗」
兄の眼が怖い。よもや鷹とか梟とかさもなくば鷲辺りにでも改名すべきだと思う。
「に、兄さんっ、ちょっと落ち着い……アーーー!」
哀れ。鷗、駅構内に散った午前九時であった。


□■□


「全く、悪ふざけが過ぎるんですよ。先輩は」
呆れたように櫻は言った。からからと笑いながら富士は煙草を吸っている。
「あれじゃあの子だって怒りますよ。婦女子の格好させるなんて」
「いや、あれは儂だけの所為じゃないぞ。酒に呑まれて無理な勝負に乗った童子(わらし)が悪い」
富士は楽しそうだ。
「後で謝った方が良いですよ。報復を受ける前に」
「そうじゃのぅ。儂もうトシじゃから童子に殴られたら怪我するかもしれんし」
長い付き合いだが富士はいつまで経ってもそのままだ。わざと言葉使いを年寄臭く見せて相手を煙に巻く。
「だが、漸くアイツも怒ったり笑ったりするようになったと思わないか?」
富士の口調が変わる。
「そう……ですね」
櫻は頷いた。
 ほんの少し前まで、燕は感情表現というものをなくしていた。それが何に起因するか、富士や櫻は知っている。
「大戦が終わって結構経ちますけど……僕はもうあの子は笑えないんじゃないかって思ってました」
大戦中でも、燕はちゃんと感情を表現出来ていた。そんな燕が感情をなくしたのは大戦が終わったまさにその時だった。
「戦闘機と友達になった。その友達が死んだ。それがアイツから感情を奪った最大の原因だから、な」
敗戦が、戦争が。彼から友達を奪ったのだ。
「俺達はどう足掻いても童子の『友達』にはなってやれんからな」
遠い空を見上げて富士は煙を吐いた。
「けど。僕らはあの子の『家族』じゃないですか」
櫻は言う。
「友達よりも、ずっと近い。そうでしょう?」
櫻は笑った。
「その通りだ」
富士は煙草の火を消し、煙缶に捨てた。
「俺達はアイツの家族だ。人でいう血縁関係がないとしても。これまでも、これからも。な」
大事な家族の大事なものは、家族である自分達が護ってみせる。なくしたならば、もう一度取り戻してみせる。富士も櫻も、そう誓ったのだ。
「さて、童子の機嫌を取りに行くかの」
「相当怒ってるみたいですよ。さっきはとがやられてました」
「本当か!? それは困ったのぅ」
きっとこれから先も、困難が訪れたり苦境に立たされたりするかもしれない。けれど、きっと乗り越えてみせる。

 そう、彼らは決めたのだ。






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