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2011.08.25 Thursday
 新刊の締め切りに間に合わせようと必死です。上瀬です。

 頑張って書いたけどあまりにキャラが崩壊しすぎだったのでボツになった分を上げておきます。兄さんがより凶悪に、そして姫様がより過激派になってしまいました。ごめんなさい。愛ゆえの熱暴走……。

 今度は暴走しないように頑張ります。

----------

「貴方は私と同じなのに、何故ここにいないのですか?」
彼女がそう問うた。


矜持の在処


 彼女の名は『つばめ』。国鉄、いや鉄道の管轄が鉄道省にあった頃から存在する特別急行『つばめ』である。つまり彼、燕と同じ存在なのだ。
 彼女の世界で、つばめは特急から新幹線へと昇華した。しかし、こちら側の特急『燕』、彼はもう現世にはいない。今で言うリレーつばめ、JR九州の特急『つばめ』は有明の弟としてここにいるし、新幹線『つばめ』も新しく誕生した。彼の空いた穴を埋めるように『つばめ』の名を継ぐ列車は生まれている。
 わからない。彼女はそう言った。
「貴方の世界の有明に聞いたわ。お前、今はもうこの世の列車じゃないそうですね。自らの意思でそう決めた、と。違いますか?」
今の燕は死者をあの世へ運ぶ幽霊列車。某名作に準えて『銀河鉄道』と呼ぶ者もいるらしい。お盆などには下り便、つまりこの世へ行く臨時便なるものもある(この臨時便も行き先の宗教やら何やらの関係で色々あってややこしい)らしいが、基本は上りのみだ。
 彼の世界で、よもや彼を知覚出来るのは有明だけだ。その有明も元々『視える』列車だったわけじゃない。有明本人に起きたちょっとした事件がきっかけで、彼には燕が見えるようになった。それがなければおそらく、燕は誰にも干渉されることはなかったはずだ。
 つばめの問いに燕は応えない。応える気すらないのだろう。
「何か言ったらどうなんです?」
燕の反応につばめは苛立ちを覚えている。
 何なのだ。この男は。

 鉄道省特別急行列車『燕』。

 この名の重さ、意味、そして責任。そういったものを理解しているのだろうか。
「残念だが、俺が貴様にその理由を答える義務も責任も負った覚えはない」
漸く口を開いた燕はそう言った。
「廃止が決まった列車が消えて何が悪い」
「廃止になったからといって、その後の世の中でその名が使われないとは限りません」
事実、燕は戦中に廃止になったが後に特急としてまた復帰した。それが廃止なった後、今度は九州の特急につばめの名が使われた。使われないという保証は何処にもないということだ。
「逃げたんですね」
名から、責務から。
「どうなの? 答えなさい」
高圧的につばめは言った。だがそんなつばめの眼差しを、燕は鼻で嘲笑ったのだ。
「何がおかしいんですか?」
「おかしい? ああ、おかしくて堪らんな」
燕は言う。
「貴様は俺に何と言わせたい。『ああ、そうだ』とでも言えば満足か? 馬鹿じゃないのか貴様。だいたい貴様何様のつもりだ? ああ、そうか。『つばめ様』だったな。姫だか何だか知らんが俺に意見したいなら一度死んで出直してくるんだな」
燕の言い様に、つばめはかあっと顔が熱くなるのが判った。こんな気分になったのは久し振りだ。こんな最悪な、こんな腹立たしい男が『燕』と認めたくない。
「ふざけるなよ、貴様」
語調が変わる。
「貴様が、何が『燕』だ。私は認めんぞ」
つばめの、国鉄時代の言葉遣いだ。最近はなかったが本気で怒った時などはこんな風にあの頃のような言葉遣いや態度になる。
「『つばめ』という名が! 我々にとってどういう意味を持つと思っているのだ! つばめという名を継いでも剥奪される者もいると知っての言葉か! ああ、腹立たしい! 貴様のような馬鹿が私と同じだと!? 冗談も休み休み言うがいい!」
つばめは名を背負って生きている。彼女にとってこの『つばめ』という名は誇り高く、そして重たい十字だった。それを燕は軽んじている。そう考えざるをえなかった。
「どいつもこいつも燕、つばめと。まあそう雀みてぇにピーチクパーチク煩く言えるもんだ」
燕は忌々しくそう吐き捨てた。
「そもそも俺と貴様が同じだと? それこそ悪い冗談だ。同じ者など存在するものか。俺は『燕(おれ)』、貴様は『つばめ(きさま)』だ。『燕』の名が何だ。ただの名前だろうが。貴様の価値観を他人に押し付けるな!」
これはいつ殴り合いになってもおかしくない空気だ。例えつばめが女性だとしても燕は男女の区別なぞつけるような性格ではないし、つばめはつばめで男として生きてきた時分に戻ってしまっている。
「撤回しろ」
「はァ?」
「『つばめという名がただの名前だ』と言ったな。撤回しろ。今撤回すれば平手打ち一発で赦してやる」
そう言ったつばめに燕は言った。
「撤回しねぇ。たかが名前に拘る安っぽい矜持なんざ俺には要らん。犬にでも食わせろ」
決定的だった。
「もう泣こうが喚こうが赦さん」
とうとうつばめがキレた。
 つばめは燕に殴りかかった。赦せなかった。この男はこの誇り高き『つばめ』という名を穢したのだ。燕は腕組んだまま避けようとすらしなかった。
 だが、その拳は燕に当たることはなかった。
「な!」
すっと、つばめの拳が燕の身体を透過した。
「貴様馬鹿か。俺はこの世の者ではないと己の口で言ったのを忘れたのか」
燕は見える者には『視える』。しかしそれだけだ。触れることも何か干渉することも出来ない。
「悪いがこれ以上貴様の相手をしている時間はない」
燕は制帽を被り直し言った。
「これから俺も『仕事』があるんでな」
彼の『運行時間』ということなのだろう。
「待て」
「こんな事象も長く続くまい。もう会うこともないだろう」
燕が笑う。
 笑う、わらう、嘲笑う。
「新幹線(きさまら)の言葉でこう言うんだったな」
列車が参ります。黄色い線の内側まで、
「下がってお待ちください」


「姫!」
目を覚ますと酷く心配した顔でソニックがつばめを見ていた。
「ここは?」
自分は先程まで燕と話をしていたはずなのに。何故ソニックがいるのだろう。
「心配させんなよ、姫ぇ。『ちょっと休む』つって全然目ぇ覚まさねぇから本気で焦ったぜ!」
そういえばそうだった気がする。列車達専用の待機室。あれは夢だったの?
(いいえ)
あれは夢ではない。夢という場所を借りた現実。自分は燕と間違いなく対話した。
 ぎゅうっと右手で左の二の腕を掴む。思い出しただけでも腹立たしかった。
「姫?」
状況が理解出来ずソニックは困惑した目でつばめを見た。
 がちゃりと扉を開けて入ってきたのはつばめのかつての保護者と、燕の世界の彼らだった。
「あ、お疲れでっす」
ソニックが挨拶する。
「お疲れ様。お邪魔するわね」
さくらが微笑んだ。
 彼女とその相棒富士は今では引退した身だが、時折こうしてつばめの許を訪れて来る。対して、あちら側、つまり燕の世界の櫻は現在新幹線さくらとして働き、富士は本来なら有り得ないことだが新幹線みずほを手伝っている。寝台特急時代の借りとかなんとかとみずほが言い、九州がゴーを出した結果だった。
 この事態に際して双方共にお互いの情報が欲しいため、彼らは彼らで情報交換をしているのだろう。そうであるから、彼らは共にいたのだ。
「つばめのお嬢さんはここにおったのか」
燕の世界の富士が言った。
「うちの新幹線が探しとったぞ。なんか話があるとか言っておったが……」
富士が言い終わる前につばめが富士の胸ぐらを掴んでいた。
「何だ、あの『燕』を名乗る男は」
怒気を込めて言う。
「ひ、姫!?」
「貴様が『富士』なのだろう。ならばあの男を教育したのは貴様だな。貴様の教育がなっとらん所為で『燕』の名に相応しくない者が『燕』を名乗っている。どう責任取るつもりだ」
よもや、怒りで相手が本当は目上だということも関係がなくなっている。
「つばめ、やめなさい!」
「私の富士は違ったぞ。ちゃんと育ててくれた」
つばめは言う。
「あの男に『燕』は穢された!」
つばめの言葉に、燕の世界の富士は状況を飲み込んだようだった。彼は通常状態の燕を知覚することは出来ない。しかし、燕が幽霊として確実に存在することを知っている。誰かに憑依(つ)いた状態ならばそれを判別することも可能だ。それは富士が過去に事故で死にかけたこともそうだが、それ以上に彼が廃止され後は自然に消えるのを待つという状態であることも起因しているのだろう。
「それはすまんかったな」
富士が詫びる。彼は否定しなかった。それが更に彼女の怒りに油を注ぐ。
「何だ、それは」
絞り出すように声を出す。
「謝れば済む問題では」
「つばめッ!」
パンッ!
乾いた音が響いた。つばめの手を引き剥がし、富士がつばめの頬を打ったのだ。
「謝りなさい」
富士は言った。
「お前は聡(かしこ)い子だ。自分が何をしたか解るだろう?」
「……失礼する」
打たれた頬を押さえ、つばめは部屋を出た。
 それを追いさくらが部屋を出る。富士が叱った後のフォローはさくらの役目。そうすることは通例で、これまでもそうしてきたことだった。
「悪い。うちのつばめが失礼した」
「いや、気にしとらんよ」
つばめの世界の富士が詫びる。すると燕の世界の富士がそう応えた。
「あのお嬢さんが取り乱すくらいじゃ。さしずめ童子(わらし)が要らんこと言うたんじゃろう」
つばめという列車がどういう娘かこの数日間で彼なりに理解している。『つばめ』という名に誇りを持ち、皆の期待に応えるために全力を尽くす。
「あの子の生い立ちが関係している所為か、つばめは『つばめ』という名に固執し過ぎるきらいがある」
そうつばめの富士(ちち)は言った。
「いや、それだけ『つばめ』として愛情を受けて育った証拠じゃ」
そう燕の富士が言い
「良い育ちをしたのう」
とそう続け笑った。


つばめは道を急いでいた。
「…………」
さくらの言葉が脳裏に浮かぶ。
『富士が言いたかったこと、解るわね? つばめ』
その意味をつばめはつばめで考えていた。
『貴女が自分の名前を大事にするのは解る。それを蔑ろにされて悔しい気持ちもそう。けれど、人様の親に当たる人をあんな風に罵倒しては駄目。無礼にもほどがあるわ』
無礼? 無礼なのは燕(あの男)じゃないか。
「待たせてごめんなさい」
新幹線のホームで、新幹線つばめは待っていた。彼もまた考えようによっては彼女と『同じ者』だ。しかし長い時間をかけて成熟したつばめと違い、やはりこの新幹線は未熟だ。しかし、あの男に比べれば……『つばめ』の名に誇りを持って生きているだけまだマシだ。
「いや、いいんだ。それより」
新幹線はつばめに歩み寄る。そして
「な」
つばめの胸ぐらを掴み上げた。
「何をする!」
「何をだと?」
おかしい。いつもの彼じゃない。――いや、彼じゃない!
「貴様、まさか」
「随分とナメた真似をしてくれるじゃないか」
姿は確かに新幹線つばめ。だがその中身は?
「何故……だ」
つばめが困惑するのも無理はない。彼はこの世の者ではないのだから。
「何故? 俺がここにいる理由か? それとも怒る理由か?」
燕は言った。
「そう、か」
燕がこの世にいられる理由。よく考えてみれば先日がそうだった。
 彼は取り憑いているのだ。新幹線つばめに。
「一番使い勝手がいいのは今熊本まで行っているからな。仕方がない。まあ、貴様と話をするにはこれが手っ取り早いからな」
死者である燕が生者とコンタクトを取る方法は相手の夢に潜り込むのが一番スタンダードな方法だ。実際先程もそうだった。だが、もう一つ彼がこの世に干渉する方法がある。それが相手に取り憑くことだ。しかし、これにも意外な落とし穴がある。誰彼好きに取り憑けるわけじゃないのだ。燕が憑くことが出来るのは『つばめ』の系譜に連なる列車、つまり彼の弟の鷗、リレーつばめ、新幹線つばめ、そしてリレーつばめの兄である有明だ。事情を理解している有明の身体を使っているが今有明はここにいない。
「貴様……何処までも見下げたヤツだな」
誇り高き燕が悪霊に堕ちたか。つばめは言う。
「見下げた、か。あれだけのことをしてくれた女がよく言う」
鼻で笑い、しかし次の瞬間にはそれこそこの世のものとは思えない眼で燕は言った。
「貴様、ジジイに何してくれてんだ?」
地を這うような声にゾッと、全身の血が引くのが、つばめにはわかった気がした。
「本人に攻撃できない腹いせに人様の身内に報復するとは『つばめ』様も地に堕ちたモンだなァ」
本当に何なのだ、この男。
 まるで相手にしていなかったかと思えば、今度は他人の身体を使ってまで報復行動に出た。この男の行動理念が判らない。
 私が富士に意見したからか? 親同然の者に告げ口されて怒っているのか?
 違う。
 燕は言った。「富士(ジジイ)に何してくれてんだ?」と。「腹いせに人様の身内に報復するとは」と。
(なるほど)
つばめはこの燕という男を漸くほんの少し理解した気がした。
「そんなに大切ならば何故それに見合った行動をしない」
つばめは言う。
「貴様が駄目ならその責任を親が問われて仕方あるまい! それが嫌ならそれなりの行動をもって示すべきだろう!」
確かにそのとおりだ。だが
「他人のことをとやかく言う前に、貴様は貴様の不始末を片づけたらどうだ、アァ? つばめ」
燕は言う。
「それにな、お前は名前を後生大事に抱えているがそれで何になるってんだ? 名前というものに拘って死んだヤツらをお前はどれだけ知っている? それが身内にどういうものを抱かせるか知っている? 貴様は何も知らんだろうが!」
燕は知っている。喧嘩ばかりだったが、連中がこの国のために命を賭したことを知っている。『この国の兵器であった』誇りと共に死んだことを知っている。彼らはそれぞれの名を遺して死んでいった。
 人は飢えても誇りがあれば生きていける、人は誇りがなくとも飢えなければ生きていける。そんな言葉を何処かで聞いた。あの頃きっと、飢えていただろうが彼らは誇りを胸に生きていた。そんな彼らの姿を、燕は見てきた。触れてきた。
 しかし、彼らは。終戦とともに消えた。
 その時燕の中に遺ったものは。どうしようもない何かだった。
「『名を惜しめ』? 大いに結構。だが『名こそ全て』じゃないことも覚えておくんだな」
そう言って燕はつばめを放した。
「ならば、貴様の誇りは何だ」
つばめは問う。燕はこう返した。
「俺の誇りは、ここにある」
そう言って胸を叩く。
「ジジイから貰ったモン、櫻から貰ったモン、鷗から貰ったモン、三式から貰ったモン、……癪だが今はいねぇあいつらから貰ったモン。俺が誰かから貰った何か全てが俺の誇りだ」
本当に誇らしげに笑う。真っ直ぐにその眼はつばめを射抜いていた。
「俺が貴様の言うご大層な『燕』たり得たのは俺以外の誰かのおかげだ。俺が偉いわけじゃ決してねぇ」
つばめは考える。彼は己の名前以上に大事な何かを持っていると。
 燕は『燕』という名から逃げたと思っていた。だが、おそらく違う。今ならそう思うことが出来る。
「なら、お前は何故ここにいないの?」
つばめはこの諍いの初めの言葉を言った。それに燕はやはりこう返す。
「残念だが、俺が貴様にその理由を答える義務も責任も負った覚えはない」
しかし、燕はその後こう続けた。
「俺がこの世にいないのは、俺が『燕(おれ)』たり得なかったからだ」
「それはどういう……」
聞き返そうとするが、彼はニィっと笑う。するとふらりとその身体が揺れた。
「おい!」
慌てて支えようとするときょとんとした顔のそれがあった。
「あれ? あっちの新幹線つばめ?」
今の彼は『燕』じゃない。この身体の本当の持ち主新幹線のつばめである。
「なんでここに? あ、そっか。俺、富士に頼んで呼んでもらったんだっけ?」
聞きたいことあって――と続ける新幹線。しかし、つばめは彼の言葉を中途半端にしか聞けなかった。


あれから、暫くが経つ。交差していた世界が元に戻り、あちら側とはリンクが切れた。二人でやっていた業務も、今は一人で負っている。
「どうしました? つばめさん」
リレーつばめが彼女に訊いた。先ほどからずっと窓の外を見たままだ。
「いえ。なんでもないわ」
ただ、彼女は考えていた。
「ねえ、リレーつばめ」
彼女は問いかける。
「貴方、つばめって名前をどう思う?」
「それは……昔お話したはずでしょう」
顔色一つ変えずに、しかし困ったような口ぶりでリレーつばめは言う。
「そうね。ごめんなさい」
視線をまた窓の向こう側の空に戻し、彼女はあの言葉の意味を考える。

『俺がこの世にいないのは、俺が『燕』たり得なかったからだ』

それはどういう意味だったのだろう。考えても考えても。答えは出てこない。
「やはり私は」
貴方という燕が解らないわ。
窓の外で漆黒の渡り鳥が舞う。それを見て、彼女は静かに笑った。
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